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木村和平『石と桃』

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木村和平
『石と桃』

発行:赤々舎

Size:H380mm x W240mm
Page:96 pages

Published in December 2025
ISBN:978-4-86541-213-0

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写真の空間、本の空間、そして身体の織りなす光景

作品の構想から10年、「石と桃」が一冊の本として刊行されます。

ものの大小や遠近が現実と異なって見えたり、色覚・時間感覚に異常をきたすなど様々な症状が現れる「不思議の国のアリス症候群」。
十年前に症状の名を知った木村は写真表現を始めるのと同時期にこの症候群についての作品を作りたいと思うようになります。
展示や私家版などを通してこれまで繰り返してきた数々の実験では、ときに写真の歴史とも交差しながら、その感覚を作品に宿すことを試みてきました。
タイトルである「石と桃」は、モノトーン調の硬いものと発色のよい柔らかいものとが混ざり合う、木村が日常的かつ突発的に見ているイメージの一つを言語化したものです。

当初、その実現不可能性から本という形ではまったく想定されていなかったシリーズは、3年間5度にわたる展示を経て、時々の身体と向き合い、あたらしい要素を受け入れていくなかで徐々に形を得ていきました。
写真集『石と桃』では、空間と身体の関わり合い、感覚の混ざり合いが、本でしかできない試みを通して見事に結実しています。

見ることと、そこに含まれる謎が幾重にも息づく写真。感覚の変容が繰り返し呼び覚まされる構成や、蛍光ピンクの糸かがりなど作品そのものを体現するかのような造本設計。体積のような余白の白。一枚一枚のページを横に進んでいくだけでなく、縦にも奥にも眼差しが向かいながら、写真の空間、本の空間、そして身体が関わり合う独自の体験が立ち上がります。

緻密に設えられた空間でありながら、写真には、"その瞬間に出会ってしまう"スナップの質が静かに流れています。
コントロールされた状況の中で、意図の外側からふいに立ち上がる光や気配。その"不可避の一瞬"を受けとめる姿勢が、木村の写真表現をスナップから今日へと連続させています。

わかる"と"わからない"の境界を飛び越え、知覚や認識の差異そのものが静かに立ち上がってくる── そんなあたらしい経験をもたらしてくれる一冊です。
見ることの豊かさと謎めきを湛える写真集『石と桃』。その感覚が、それぞれの身体に静かに宿ることを願っています。

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木村和平
1993年、福島県いわき市生まれ。東京在住。第19回写真1_WALLで審査員奨励賞(姫野希美選)、IMAnext #6「Black&White」でグランプリを受賞。主な個展に、2022年「石と桃」(Roll)、23、24年「石と桃」(Roll / PURPLE)、25年「石と桃」(Roll)、2020年「あたらしい窓」(BOOK AND SONS / book obscura)、2019年「袖幕 / 灯台」(B gallery)。主な写真集に、『IRON RIBBON』(Libraryman)、『あたらしい窓』(赤々舎)、『袖幕』『灯台』(共にaptp)など。

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